明日のためのビブリオ

自信を持ってお薦めできる本だけを紹介する書評サイトです。

ブランドとは尖がった独自性であると教えてくれるマーケティング本『ザグを探せ!』

みんなが「ジグ」なら、あなたは「ザグ」を目指せ!という標語が、本書のテーマのすべてだろう。

それが理解できたならば、述べられる皆と違った独自性を磨くために何をすればよいのか、というザグを探せ!で述べられている17のステップを試してみればよい。

この本は、マーケティング本であり、起業のためのアイデア本だ。

本書の内容を実際に行動に起こすには、エネルギーが必要だが、このステップを踏んで、ビジネスを構築していくことができたら、成功する確率はグンと上がる気がする。

自分が実際に行動してみて、結果、うまくいかなかったという経験は、あとから振り返ると、「ああ、これは、ザグじゃなかったからな」という感覚。

実際に、この『ザグを探せ!』に書かれていることを実行するのは、簡単なようでいて、難しい。

 

ともかく、こんな短い1冊の中に、これだけ示唆に富んだ具体的なアイデアが盛り込まれている本は、なかなか見かけることがない。

何気なく、付録についている「マーティの辛口ネーミング批評」だけでも、この本の定価分の価値はあるんじゃないだろうか。例をあげると、石油会社であれば、Shellは良いネーミング。Unocalは悪いネーミング。この理由がきっちり分析されているのだけれど、こんなネーミング批評が、既存の企業70社分を超える量、ついているのだ。付録にしては、豪華極まりない。

一読してみると、いろいろと気づきがあるはずなので、起業を志している人には、特にお薦めである。

 

部屋の整理だけに留まらない『佐藤可士和の超整理術』

野口悠紀雄氏による『超・整理法』は間違いなく良書だけれども、その二番煎じのように『超○○法』と名のつく本が次々に出版される中で、「超」の文字が付いているだけで、タイトルが月並みに感じられるようになってしまったのだから、不思議なものだ。

なので、『佐藤可士和の超整理術』というタイトルを見たときには、正直、「あーまたか」みたいな感覚になったのは白状しておきます。

 

とは言っても、あの佐藤可士和氏の著作が詰まらない二番煎じなはずは無いだろうと手に取ってみると、これが良書だった。

この本について思ったことは、以前、「43memo」の方で、一度、記事にしており、そこで、あらかた述べてしまった感もあるが、書評ブログとして立ち上げた「明日のためのビブリオ」の方でも紹介しておきたいと思った次第である。

というわけで、あらためて紹介するが、著者の佐藤可士和氏は、クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナーなどの肩書きでデザインを生業にしているこの世界のスペシャリストで、この佐藤氏の仕事振りを紹介している書籍のには、読んで気づきが得られる本が多いような気がする。

そんな佐藤氏が整理術について述べたのが、この佐藤可士和の超整理術』なわけで、前半の「空間の整理術」のパートでは、机の周り、カバンの中身、棚の整理など、物理的なモノを整理する考え方が述べられているのに対し、後半になると「情報の整理術」「思考の整理術」とステップアップし、いつのまにか、「片付け論」ではなく、「よい仕事を進めるための考え方」に論点が移っているのが面白い構成だと思う。

 

空間の整理に関する考え方を発展させると、情報の整理の仕方に応用ができるし、それを更に進めると、思考の整理方法につながる……というわけだ。(そういえば、HACKSシリーズの最新作である『片づけHACKS!』も、一見、片付けをテーマにした本のようでありながら、情報の整理や時間の整理という仕事環境の整え方全般をテーマにしていたな、と思い至った)

 

この本の主張する「空間」「情報」「思考」の整理手法は、p62~p63に掲載されている図をみると、そこに纏められているわけだが、所謂「できるヒト」は、こうやって、全体感を持った本質の理解をしているのだな、という気づきが得られれば、佐藤可士和の超整理術』を読んだ甲斐があったというものだ。

「空間」にしろ、「情報」にしろ、「思考」にしろ、整理していく過程で、「整理」というものの本質を突き詰めていくと、結局は、ひとつの大きな方法論に集約されていくと言うことであり、各々は個別のテーマのようでいて、汎化していくと、p62~p63の図に辿りつくのだ……と、私は理解した。

佐藤可士和氏の仕事論に触れる意味でもお薦めできる一冊なので、未読な方は、ぜひ、手にとってみて欲しい。

 

あなたは相対性理論の世界を描いた夢を見つけることができるか?『アインシュタインの夢』

前回、紹介した『ザ・プロフィット』のストーリーの中で、課題図書として紹介されていた『アインシュタインの夢』を紹介しよう。

 

特許庁に勤務している26歳のアインシュタイン特殊相対性理論を思いつく前に見ていた不思議な夢の数々をそれぞれ短編にし、連作という体で一冊にまとめたのが、本書『アインシュタインの夢』だ。

詩的な表現で描かれる不思議な夢の数々は、例えば、「未来が既に決定している世界(そこに住む人々も未来を知っている)」であったり、「老人がどんどん若くなるような時間が逆行する世界」であったり……想像力をかきたてられる不思議な世界(と時間の概念)が紹介される。

実は、ここで紹介されている不思議な世界の中のひとつに、我々が過ごす現実の世界(時間)が紛れ込んでいるという凝った仕掛けだ。

興味深いのは、実際の我々が過ごす時間の概念も、様々な不思議な世界たちの中に紛れると、その不思議さには違和感がなく、アインシュタイン相対性理論の概要を知らなければ、それを見つけ出すことはできない。いや、相対性理論を知っていたとしても、注意深く読まなくては、それを見つけ出すのは難しい。

この謎解きも、この本の魅力的な仕掛けのひとつだ。

 

ひとつの話が、4ページほどの短い文章にまとめられているのも、読みやすくてよい。

「すべての人が世界が終わる日を知っている世界」など、人生とはなんだろう……こういう世界で生きるというのはどういうことなのだろう……と考えさせられるような話も多く、何度も読み返す愛読書のひとつになった。

 

著者のライトマンは、マサチューセッツ工科大学の教授で、物理学の講義を受け持っているそうで、そんなライトマンだからこそ書けた傑作だと思う。

 

明日のためのビブリオ

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巷の読書好きの間で、密かにブーム(?)になっていたビブリオバトルをご存知でしょうか?(一時期は、あちらこちらでビブリオバトルイベントが開催されていたので、これは、まあ、ブームといっても差し支えないはず)

ビブリオバトルの公式サイトでは、「知的書評合戦」と題されていますが、まさに、これは、的確な表現です。

 

皆で集まって、本を紹介しあう。そして、その5分程度の書評プレゼンを聴いて、読んでみたくなった本に投票し、チャンプ本を決める。(その書評プレゼンの勝敗を決するまでが、一連の流れなわけです)

5分という短時間でその本の魅力を伝えるために大事なのは、アピールするポイントの絞り方と、その本にかける熱量。プレゼンの巧拙だけでは勝負は決まらず、その本への愛がどれだけあるかが勝敗に大きく影響する点が、とても興味深いです。

 

さて、私は、元々、「43memo」という雑記ブログをやっていたわけですが、雑記ブログだと、なんというか、テーマが散漫になってしまう傾向があって、雑記ブログの中で書評記事を書くやりにくさみたいなものを感じていました。

 

なので、43memo」については、日々の気づきだけを書く雑記ブログとして運営していくことにして、書きたかった書評記事については、はてなブログでの出張版として、この「明日のためのビブリオ」にまとめていきたいと思った次第です。

 

書くからには、「本当にお薦めしたい本」だけに絞った、私にとっての「チャンプ本」を並べたような書評サイトに育ててみたいです。

 

というわけで、「明日のためのビブリオ」に、ご期待ください。