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あなたは相対性理論の世界を描いた夢を見つけることができるか?『アインシュタインの夢』

前回、紹介した『ザ・プロフィット』のストーリーの中で、課題図書として紹介されていた『アインシュタインの夢』を紹介しよう。

 

特許庁に勤務している26歳のアインシュタイン特殊相対性理論を思いつく前に見ていた不思議な夢の数々をそれぞれ短編にし、連作という体で一冊にまとめたのが、本書『アインシュタインの夢』だ。

詩的な表現で描かれる不思議な夢の数々は、例えば、「未来が既に決定している世界(そこに住む人々も未来を知っている)」であったり、「老人がどんどん若くなるような時間が逆行する世界」であったり……想像力をかきたてられる不思議な世界(と時間の概念)が紹介される。

実は、ここで紹介されている不思議な世界の中のひとつに、我々が過ごす現実の世界(時間)が紛れ込んでいるという凝った仕掛けだ。

興味深いのは、実際の我々が過ごす時間の概念も、様々な不思議な世界たちの中に紛れると、その不思議さには違和感がなく、アインシュタイン相対性理論の概要を知らなければ、それを見つけ出すことはできない。いや、相対性理論を知っていたとしても、注意深く読まなくては、それを見つけ出すのは難しい。

この謎解きも、この本の魅力的な仕掛けのひとつだ。

 

ひとつの話が、4ページほどの短い文章にまとめられているのも、読みやすくてよい。

「すべての人が世界が終わる日を知っている世界」など、人生とはなんだろう……こういう世界で生きるというのはどういうことなのだろう……と考えさせられるような話も多く、何度も読み返す愛読書のひとつになった。

 

著者のライトマンは、マサチューセッツ工科大学の教授で、物理学の講義を受け持っているそうで、そんなライトマンだからこそ書けた傑作だと思う。