明日のためのビブリオ

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部屋の整理だけに留まらない『佐藤可士和の超整理術』

野口悠紀雄氏による『超・整理法』は間違いなく良書だけれども、その二番煎じのように『超○○法』と名のつく本が次々に出版される中で、「超」の文字が付いているだけで、タイトルが月並みに感じられるようになってしまったのだから、不思議なものだ。

なので、『佐藤可士和の超整理術』というタイトルを見たときには、正直、「あーまたか」みたいな感覚になったのは白状しておきます。

 

とは言っても、あの佐藤可士和氏の著作が詰まらない二番煎じなはずは無いだろうと手に取ってみると、これが良書だった。

この本について思ったことは、以前、「43memo」の方で、一度、記事にしており、そこで、あらかた述べてしまった感もあるが、書評ブログとして立ち上げた「明日のためのビブリオ」の方でも紹介しておきたいと思った次第である。

というわけで、あらためて紹介するが、著者の佐藤可士和氏は、クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナーなどの肩書きでデザインを生業にしているこの世界のスペシャリストで、この佐藤氏の仕事振りを紹介している書籍のには、読んで気づきが得られる本が多いような気がする。

そんな佐藤氏が整理術について述べたのが、この佐藤可士和の超整理術』なわけで、前半の「空間の整理術」のパートでは、机の周り、カバンの中身、棚の整理など、物理的なモノを整理する考え方が述べられているのに対し、後半になると「情報の整理術」「思考の整理術」とステップアップし、いつのまにか、「片付け論」ではなく、「よい仕事を進めるための考え方」に論点が移っているのが面白い構成だと思う。

 

空間の整理に関する考え方を発展させると、情報の整理の仕方に応用ができるし、それを更に進めると、思考の整理方法につながる……というわけだ。(そういえば、HACKSシリーズの最新作である『片づけHACKS!』も、一見、片付けをテーマにした本のようでありながら、情報の整理や時間の整理という仕事環境の整え方全般をテーマにしていたな、と思い至った)

 

この本の主張する「空間」「情報」「思考」の整理手法は、p62~p63に掲載されている図をみると、そこに纏められているわけだが、所謂「できるヒト」は、こうやって、全体感を持った本質の理解をしているのだな、という気づきが得られれば、佐藤可士和の超整理術』を読んだ甲斐があったというものだ。

「空間」にしろ、「情報」にしろ、「思考」にしろ、整理していく過程で、「整理」というものの本質を突き詰めていくと、結局は、ひとつの大きな方法論に集約されていくと言うことであり、各々は個別のテーマのようでいて、汎化していくと、p62~p63の図に辿りつくのだ……と、私は理解した。

佐藤可士和氏の仕事論に触れる意味でもお薦めできる一冊なので、未読な方は、ぜひ、手にとってみて欲しい。